近年,ゲームデザイン関連で心理学用語が使われるようになっている。ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2024」でも,その経緯についての講演「ゲームUXコミュニティに見る『人類共通の脳機能』とゲームデザインへの応用」が行われていた。
本講演では,ゲームと心理学がいかにして接近したのか。また,UXを高めるための社内での意志統一の大切さなどが語られた。
登壇者は,
山根信二氏(NPO法人国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)理事/東京国際工科専門職大学 教員)
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ゲームと心理学はいかにして接近したのか
ゲームデザインに心理学用語が使われるようになったのは,「欧米のゲーム教科書」からのムーブメントであるという。
心理学を学ばずともゲームは作れるが,作品にさまざまなフィーチャーを導入する際,
心理学をベースとして「人間はそのように進化したから」と明確に根拠を説明できるのが理由である,と山根氏は語る。
例えばメニューの長さを決めるにしても,従来は個人的な経験やさじ加減に頼っていたものが,心理学の知見があれば「人間はここまでの長さしか覚えられないから,この長さにした」と明快に説明できる。
人から人へ技能やノウハウを継承するとき,前述したような個人的経験などでは伝わるものも伝わらない。また,伝える側と聞く側の双方にリテラシーがあることも前提となってしまう。作品がヒットした理由についても,アーケードゲーム畑の人がモバイルゲームしか知らない人に伝えようとしても,双方が持つ知識や用語は異なるので伝わりにくい。
しかし,
“心理学用語を共通言語とすれば”そうした世代間断絶が起こりにくい。近年は大学でもゲームデザイン講座が開かれるが,それが可能なのも世代を越えて説明できる言葉が設定されたからなのだ。
心理学用語がゲーム業界に波及したきっかけは,ゲームメーカー
「エレクトロニック・アーツ」(EA)にあると山根氏は述べる。
まずは前段階での2つの出来事として,「最後の授業」で知られるカーネギーメロン大学の終身教授ランディ・パウシュ氏が,長期研究休暇を取ってEAで働き,その経験を「An Academic's Field Guide to Electronic Arts」という論文にまとめた。さらに2007年,EAが創業者の全員が医学博士や大学研究助手であるBiowareを買収し,大学の教育プログラムを知る博士がEAの副社長となった。これらが発端にあるという。
人のモチベーションを研究するにはゲームがよい題材になるということで,開発者向けカンファレンス「Game Developers Conference」(GDC)では,心理学研究シンクタンクからの登壇が連続した。
また「シムシティ」「シムアース」などシミュレーションゲームで知られる
ウィル・ライト氏が,ゲームデザインに心理学博士を参加させた新作「Spore」についての発表を毎年行い,ほかの学者も同作を題材にした論文で追従した。ほかにも
「Left 4 Dead」ではゲームデザインのために実験心理学者が雇われ,体験に対する仮説が立てられ,装置が作られ,検証を進めるという形で「実験するようにゲームデザインをしていく」(山根氏)など,ゲームと心理学の接近が進んでいった。
「Left 4 Dead」の開発においては,体験者の手の汗から心理的刺激を測定する機械を作成するなど,ゲーム開発ではユニークな取り組みが進められた。その記録を公開する姿勢にも研究を思わせるものがある。
Game design courses are now being held at universities, new perspectives such as user experience (UX) experiments have been added, and game design textbooks are being produced. However, even if a game company suddenly uses an outside think tank, there may be disadvantages.
Game designers are often the kind of people who work the way they want, and dislike being interfered with in the content of their work. Moreover, if the other party is an external think tank, it becomes even more so, and as a result, game designers end up putting off opportunities for interference (such as test play). In fact, there have been cases where think tanks have given their opinions but they have decided to release the product as is because it is too late to fix it in time.
There are also issues with hiring an in-house UX director. In order to improve UX, it is necessary to unite the will of the entire company, but since the UX director is a position that has not been previously held at a game company, it is possible to learn lessons from connections with seniors. The problem is that it can't be done.
In addition, Mr. Yamane points out that even if you use psychological terminology, there is a possibility that you will fall for the wrong theory. The best theories for this are ``the brains of men and women are different'' and ``the right and left brains work differently.'' At GDC, there was also a paper that suggested that we should abandon the dopamine theory when thinking about rewards. It seems that efforts are being made to correct the theory.
However, in both psychology and UX, further success cannot be expected unless we take into account the background that the Western game industry has overcome. A necessary step in recent years is how to deal with new concepts in game creation.
以上がゲームと心理学はいかにして接近したのか。「ゲームUXコミュニティに見る人類共通の脳機能とゲームデザインへの応用」[CEDEC 2024]の詳細内容です。詳細については、PHP 中国語 Web サイトの他の関連記事を参照してください。